世界へ挑め。心奮える仕事がそこにある。 Series 01:オランダ編 乾 太輔 Taisuke Inui MarFlex Holding B.V.  CEO

 流体移送機器の総合メーカーとして「未来創造型企業」を志向し、グローバルな事業展開を推し進める大晃グループ。2018年には、オランダのポンプメーカーMarFlex社をグループ企業に迎え、ビジネスフィールドはさらに拡大した。地球規模で広がる仕事は、人の成長も加速する。ただし、戦略なき拡大は膨張でしかない。自らの力で市場を拓くグローバルエクセレントへ。大晃グループのグローバル戦略を実践するキーパソン達のリアルを追う。

 乾は、M&A後のMarFlex社に当初CFO(最高財務責任者)として赴任。ほどなくCEO(最高経営責任者)に就任した。託されたミッションはMarFlex社の経営基盤強化と大晃グループとしてのシナジー拡大。端的に言えば、今回のグローバルM&Aの成果を極大化することである。単身、ロッテルダムに赴いて4カ月(取材時:2018年11月)。改革は緒についたばかりだが、その絵はどこまで描かれているのか?現状を乾自身に聞いた。

ー まずは、MarFlex社の事業について教えてください。

 事業は主に舶用のディープウェル(深井戸型)ポンプの開発・製造・販売です。現状は、半分以上の売上を中国市場で上げていて、アジアに偏ったビジネスになっています。だから、今後は中国だけではなく、他の市場にも力を注ぎたい。まずは日本です。今回、大晃グループに入ったことで、その足場は固まりました。それから日本以外のマーケットへも出ていく。例えばアメリカとか…。バランスのとれたグローバル展開を考えています。
 また製品軸でも、ディープウェルポンプだけではなく、大晃機械のポンプ等も含めて、どういった形で製品のラインナップを広げていくことができるのか、ということも検討していきたいと思っています。

MarFlex社のディープウェルポンプ主力4製品。用途や仕様は異なるが基本的な構造は同じで、上部から順にデッキ設備・パイプスタック・ポンプヘッドの3つのパートからなる。上部デッキにあるモーターからパイプスタックを通して最下部にあるポンプヘッド内部のインペラを回転させ、タンク内の油などを上部に移送する仕組みだ。


ー 現状の事業テーマは?

 営業的には、前述のとおり日本と欧米のマーケットをあらためてターゲット設定しました。今後はそこに人員を強化し、CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)の考えを入れて顧客との関係性を見直していきたい。既存のお客様に対する深掘り営業を進めることが目下のテーマです。
 また営業面に加えて、サービスもCRMにおける重要な要素です。きちんとお客様を把握して、必要なモノを必要な時に提供できるようシステムや環境を整えていく。これも重要だと考えています。

ー CEOとして心がけていることがありますか?

 オランダに赴任した当初は、CFOとしてキャッシュフローの改善など財務面の課題解決が主務でした。しかしCEOである今はより多くのレポートライン(業務報告ルート)を抱えていますので、できるだけ多面的な情報を仕入れて的確な判断を下す、ということを心がけています。現在、CEOにポジションチェンジしたばかりということもあっていろんな組織とのミーティングが非常に増えています。各部門からのレポートを週一で上げてもらって、一日4~5件のミーティングをこなす。そんな毎日です。

当初、財務部門が中心であったミーティングも、現在では開発、製造部門を含めた全社各部門に拡大し、それぞれ週1回ペースで実施。課題の発見と解決を週単位で確認し、部門のレベルアップを目指すのが狙い。

MarFlex 概要

グローバルマーケットで支持される優れた製品力とシステム提案力。

 MarFlex社は1980年にオランダ・ロッテダムで創業しました。80年代後半、電気駆動ディープウェルポンプの開発に成功し事業を拡大。その後、ポンプに関するトータルシステムサプライヤーとしてグローバルな展開を開始しました。その強みは1万2,000を超える製品アイテムを持ち、製品単体ではなくシステムとしてのソリューションを図ることで国内から海外まで多様なニーズに応えられること。また自動化システムの開発・製造に優れた実績とノウハウをもつシュナイダーをグループ企業としたことでソリューション力はさらに高まり、現在「Crewless Cargopump」をテーマに掲げて無人オペレーションシステムの実現を目指しています。

ー MarFlex社の特長と課題をどうとらえていますか?

 きちんとした組織だな、という認識を持っています。非常に近代化しているというか、ITシステムにしてもそうですし、あるいは組織の関連文書にしてもそうですし、そういったものがきちんと整備されている会社という印象です。
 カルチャーとして見れば、組織立っているというか、きちんと論理的に物事を進めようとする。しかし、その反面、すべてを系統立ててやろうとしてしまうがために、物事を複雑にとらえ過ぎるきらいがある。それが課題につながることがあるとも感じています。

ー 日本とオランダ…その文化の違いからくる摩擦などはありませんか?

 摩擦というのはないと思います。それは私がちゃんとコメントしているから。日本人が欧米人と仕事をする際に往々にしてあることですが、自分の考えをはっきり言わないことが多い。そうすると欧米人の多くは「あの人は何を考えているんだろう?」と、奇異にとらえるわけです。我々は、彼らからすれば普段見慣れないアジア人の顔をしていて、その時点ですでに違和感がある。その上、何のコメントも発しないとなると、余計に変な人間…「何を考えているかわからない」「こいつは何なんだ」「何か変なことをするかもしれない」となってしまいます。そうなると、摩擦も起きてしまうかもしれません。

財務部門のスタッフと。乾の前職が監査法人での経営コンサルであっただけに数字を見る目は厳しい。スタッフへの指示もストレートだ。必要なことを曖昧にしないことが信頼構築の基本と乾は考えている。


ー CEOとしての今後のビジョンは?

 当面は、このMarFlexという会社をきちんと立て直していくことですね。大晃グループの中で、付加価値のある会社としてポジションを確立することが、何よりのミッションだと思っています。
 来年4月からの稼動を目指して、現在、中期経営計画を策定しています。計画は5年をターゲットに進める予定ですので、それが一つのマイルストーンになります。具体的な内容はこれからですが、大晃機械とMarFlex、それぞれの得意分野を見極めて、製造や調達のグローバル最適化を図るとか、共同開発などということも出てくるかもしれません。いずれにしてもシナジーを生み出す具体策を実践していきたい。その成果を5年という区切りの中で出していければと思っています。

ヨーロッパに本拠を置くMarFlex社が大晃グループに参加したことで、そのグローバル展開は世界に広がろうとしている。乾はさまざまな可能性を思い描きながら、2019年春の中期経営計画の策定を行っている。

ディープウェルポンプとは

電気駆動の採用によって油圧駆動の欠点を克服した
画期的なMarFlexディープウェルポンプシステム

 石油・液化ガスなど液体貨物を運ぶ船舶やそれを貯蔵するタンク設備にはカーゴポンプが不可欠です。カーゴポンプにはさまざまな種類がありますが、MarFlexは1988年に電気駆動のディープウェル(深井戸型)ポンプシステムの製品化に成功し、以後世界中の海運企業の支持を受けることで“ディープウェルポンプのMarFlex”というブランドを築き上げてきました。従来の油圧駆動の欠点であった騒音や動力効率等の問題を電気駆動の採用で克服し、さらに独自の構造によって操作性・信頼性を高めた製品群は今も高い優位性を保っています。

ー 大晃グループで求められる人材像とは?

 MarFlexのCEOという立場で言えば、オランダという文化の異なる会社の中で戦える人材ですね。言い換えれば、きちんと自己主張ができて、ノーはノーと言える人材。語学ができるというだけの人は必要ありません。大事なのは語学ができることではなく、ここで現地の人たちとどういう仕事ができるかということです。ダメなものをダメと言えるか?自分の考えを伝えた上で、相手の意見を聞き、何が合意できて、何が違うのか…そういうことを判断して、Yes、Noをはっきり言えるか?それができないのは、そもそもの考えがないからだろう、と私は思っています。
 さらに日本人を前提にすれば、日本人であることの価値をこの会社でいかに発揮できるか、ということを考えられる人が必要だと思います。欧米のカルチャーに日本的な思考を持ち込んで、刺激することも一つの価値でしょう。異なる価値観の衝突や融合から生まれる新しいものの見方や考え方も一つのシナジーだろうと思います。

大晃グループの成長はグローバル展開の成功にかかっているといっても過言ではない。その意味では、グローバルの舞台で仕事をしたいという考えを持った若い人材に会社としても期待したい。
「仕事は決してラクなものではありませんが、それ以上の経験を得ることができるのではないでしょうか」と乾。


ー グローバルな仕事の面白さとは?

 一番は価値観の違いからくる刺激的な体験だと思います。日本だけにいると日本人の価値観にしか触れることがないので、それが普通になってしまいます。でも、海外に出るとまったく違う考えと遭遇します。相入れないような価値観も、気候だったり、過去の歴史だったり、いろんな背景があって醸成されている。それを拒絶するのではなく理解する。旅行とかでは見えてこない部分です。だから、そうしたことを感じられること自体が面白い。グローバルな仕事には、自分の人生を豊かにしてくれる体験が豊富にあると思っています。

ー 就活生に向けてアドバイスをお願いします。

 自分自身の分析がきちんとできていることが大切だと思います。何が得意で、どういうことであれば付加価値を出せるのか。不得意なことをいくら頑張っても、付加価値は生み出せないと、個人的には思っています。だからこそ、自分の得意分野を把握し、どこでなら価値が出せるということをきちんと理解していることが大切。それはみなさんの人生において、今後ますます重要になってくるだろうと思います。

仕事環境

開放感あふれる快適なオフィス。
設計から製造まで現場が隣接する環境も、モノづくりには最適。

 オランダ南西部の重要港湾都市・ロッテルダム。MarFlexの本社は、その中心部から車を20分ほど走らせた小さな港町にあります。広大な敷地に、グループ企業のSnijders社を含めて6棟の建物が整然と並んでいます。オフィスに入ると解放感あふれるフロアにゆとりをもたせたデスク配置。いかにも快適な業務環境です。また設計から製造までが同じ敷地内に隣接するためモノづくりの環境としても理想的。試作、設計確認・変更…意思の疎通もスムーズです。
 MarFlexが得意とするのは製品単体だけでなくシステムとしてのモノづくり。そうした強みも、この環境が支えています。

グローバルビジネスの“HUB”シンガポールから東南アジアを俯瞰する。 Series 02:シンガポール編 東野 義男 Taisuke Inui TAIKO ASIA PACIFIC PTE. LTD.  C.E.O.